アキコマ純情〜あきたこまち17歳文學〜




誕生日といえば一年の内に一度来る自分だけの特別な日。
自分を生んでくれた両親に感謝すると共に、生まれたことを祝われる日。

高校生の私たちは、あと数年で二十歳。
それは子供の頃からの憧れる年齢であったり、一種の大人になる境目として捉える年齢であったりと、人によって感じ方は様々。
しかし、誰もがその年齢に対して何かしらの区切りを見いだしている。
だからこそ、残りわずかとなった十代の誕生日を何か思い出に残る特別なものにしようと思うのだろうか…。


その日、私のクラスに誕生日を迎えた女子生徒が一人いた。
普段から静かに読書をしている子で、クラスの中で特別目立つようなタイプではない。
いわゆる文学少女。
時折活発な性格の運動部の子達が教室のカレンダーに友達の誕生日を書き込んでいたりするが、その日の日付のところに文学少女の誕生日だという印は何もなかった。
クラスメイト達は私も含め、誰も文学少女の誕生日だということを知らなかった。
その日が彼女の誕生日だと知る人は限られた極数名の、彼女といつも一緒にいる女の子だけ。
彼女達からは、私達が知らない間にささやかに「おめでとう」を言われたのだろう。
これは後で気づいたのだが、彼女の机の脇には小さな小包が入った小さな袋があった。


そしてその日の昼休み。
各々が持ってきた弁当を食べ終え、教室内は普段通りのくだらない話題で溢れ、賑やかだった。
そこに、教室の戸を小さくノックする音が混ざった。
教室内のざわめきは一瞬収まり、数人がそちらを振り返ったが、ノックしたのは後輩である2年生の男子生徒。
すぐに皆興味を失って元の賑やかさに戻った。
その男子生徒はそんな先輩達で溢れている賑やかな教室へ、遠慮がちに入ってきた。
一度は興味を失った私達だが、真っ直ぐ一点を見つめ大きな紙袋を手に持って歩き出したその一人の後輩に、再び興味を持ち出し、その行動を見守った。

彼は、例の文学少女が静かに読書している机の前でピタリと立ち止まり、「先輩」と声をかけた。
文学少女は声をかけられるまで彼がそこにいることに気が付いていなかったようで、少し驚いた表情をして顔を上げた。

「お疲れさまです」
「お疲れさま。どうしたの?」
「先輩今日誕生日ですよね」

彼はそういうと、彼女に見えないように後ろ手に持っていた紙袋の中から、綺麗にラッピングされたピンク色の大きな包みを取り出した。

「お誕生日、おめでとうございます」

少し照れながら彼女にその包みを手渡し、彼女が受け取ったことを確認すると、教室中が「おめでとう」と拍手で包まれた。

自分の後ろから思わぬ多数の拍手のシャワーを浴び、またも驚いた顔で振り向いた彼女だったが、すぐに笑顔になり、

「ありがとう」

と言った。

性格も部活も違う、普段彼女とは接点を持たない他クラスの人達も混じって、一つ年下の男子生徒の行為に感動し、同時に彼女の誕生日を祝った。
ふと周りを見ると、全員が二人を笑顔で見守っていた。
あんなに温かな風景を、私はそれまで同じ教室で見たことがなかった。

まるで小さな恋物語のようだと思った、アキコマ純情。



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