アキコマ純情〜あきたこまち17歳文學〜




皆さん、着メロは何にしていますか?

ポップ?ロック?クラシック?

人によって曲の好みは様々で、時折誤って公共の場でそれを大音量で流してしまい、妙に恥ずかしくなった経験がある人も多いのではないでしょうか?

今回はそんな着メロについての、高校での出来事。


春…と言っても、私のいる所は今年は特に積雪量が多かったこともあって、雪がまだ残っている上に、四月中旬になってもなお雪が降り、桜も咲いていないそんな春。

新入生が、まだ着こなせていない大きめの制服を身に纏いながらの入学式を無事に終え、新しい後輩を迎え入れた次の日。


「はい、授業始めるぞー!」

先生の掛け声で授業が始まり、難しい数学の応用問題を解いているシーンとした状況の中、事は起こりました。

ケーン!ケーン!

…雉が鳴きました。

「あぁ、やっぱりこの辺にもいるのか、雉」

確かに、学校の回りには畑や田んぼが所々に見られ、時折遠くから先程のような雉の鳴き声がすることがありました。

ですが、鳴き声の大きさからいって雉はかなり近くにいるはずで、姿が見えてもおかしくないのに、窓の外にはそれらしき影はありません。

先生も、どこにいるのだろうとしきりに窓の外を見ていましたが、ついに雉の姿はありませんでした。

授業を終え、先生が教室から出ていった途端、窓際にいた一人の男子が立ち上がってガッツポーズを取りました。

何事だと思って皆が注目すると、学校内で使用が禁止されている携帯をポケットから取りだし、あるボタンを押しました。

ケーン!ケーン!

聞こえてきたのは先程聞いた雉の鳴き声。
皆目を丸くして彼を見ました。

そんな視線を受け、彼は満足げに微笑むと、説明を始めたのです。

「俺携帯の電源切るの忘れててさ。着メロ鳴ったときはビビったけど、雉の鳴き声にしておいて良かったわ〜」

一泊おいて、教室は笑いの渦となりました。
「お前マジ最高!」

「その手があったか!」

「雉ってお前(笑)」

などなど、彼に対する様々な評価が交わされました。
勿論女子たちも彼のアイディアには驚かされ、そのうちほとんど皆が万が一携帯の電源を切り忘れたときのために鳴っても不自然じゃない着メロにしていました。


そのうちの一例で、私が最も感心したのが、その一週間後の出来事です。

授業中、キーンという耳障りな音が教室に響きました。
もちろん皆音の出所を確かめようと周囲に目を配ります。が、十秒もたたないうちに音はプツンととぎれてしまいました。

「どした?ざわついてないで問題解けよー」
先生はどうやら気づいていない様子でした。あれだけ大きな耳障りな音だったのだから、絶対に何かしらの反応をしてくるだろうと予想していただけに、なんだか拍子抜けしてしまいました。

その授業中、その耳障りな音は二、三回鳴りましたがついに先生は何も言わず、授業が終了して出ていってしまいました。

すると、今度はまたも窓際の女子がポケットから携帯を取り出して周囲の友達に言いました。

「スゴイ!本当に聞こえなかったんだ!」

なんのことだと皆首を傾げましたが、そのうちの一人が「もしかして」と切り出しました。

「さっきのモスキート音?」

すると次々と「ああ!」とか「それか!」とかいう声が教室中て交わされました。

ご存知の方も多いと思いますが、ある決まった高さのモスキート音は大人の耳には聞こえません。
今回は、それを利用したらしいのです。
授業中堂々となった彼女の着メロは、生徒にしか聞こえず、先生の耳には全く聞こえていなかったのです。

見事だと思ったのと同時に、そこまでして携帯の電源を切りたくないかと高校生の変なこだわりに少々呆れたアキコマ純情。



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