アキコマ純情〜あきたこまち17歳文學〜




卒業式といったら、皆さん何を思い浮かべますか?

桜が散る校庭?
涙を流しながら校歌を歌う卒業生?
そんな我が子を見て子供以上に泣いている親御さん?
それとも卒業生と一緒に泣いている先生?

様々だと思いますが、わたし的には桜が一番「卒業式」という儀式にぴったりだと思っています。

とはいっても、卒業式に桜が咲いている地域なんて、全国的に見ても少ないと思います。
しかし、卒業式に雪が残っている所はそれ以上に少ないと思います。


卒業式のその日は、朝からどんよりとした雲が空を覆っていて、天気予報では雪が降るとのことでした。

道端には…というか、外は一面真っ白で、道路の黒いアスファルトなんて見えません。

これのどこが卒業式だ!と天気に文句を言ってみても、何が変わるわけでもなく…。
そもそも、もとより卒業式に桜が咲くなんて奇跡は、わたし達の住んでいるところではおきません。無理です。

テレビでは東京の方では桜の蕾が膨らんできたとかいうニュースが流れてくる頃ですが、こちらでは3月中には桜の影すら見当たりません。

関東の桜の木の蕾が膨らみ始め、うっすらと枝が桜色に染まり始める頃、こちらでは木々の枝には白い雪がつもり、白い花が咲いているかのような状態です。

幹まで白いともうそれは雪でできた彫刻のようです。

気温は言うまでもなく氷点下。吐く息が白くなるのを見ながらの登校でした。



やっと学校にたどり着き教室に行ってみると、窓際の温水パネルヒーターに隙間なくぴったりとくっついて並んであったまっている同級生の姿が。

ここは明け渡すものかという微妙な圧力をかけられているのが、教室に入った瞬間わかりました。

そんな必死にならんでも…。




体育館に行ってみると、前日に生徒会が頑張ったのか、紅白の垂れ幕がかかっていました。

体育館には大きなストーブが四,五台ありましたが、恐ろしく寒かったです、ええ。
そりゃもう吐く息が白くなるくらいに。
カイロを貼ってきた人は勝ち組です。

しかし父兄が入ってくるとともに、人の熱も加わったせいなのかだんだんと温かくなりました。


で、いよいよ卒業式。

我が子が卒業証書をもらうのを見て感極まって涙する親御さん達。

生徒の名前を読み上げる先生の声が少し震えていました。

前生徒会長の涙ながらの別れの言葉でもらい泣きをする数名の在校生。

もらい泣きをしながらこちらも別れの言葉を送る現生徒会長にまたもらい泣きをする在校生。

そんな「THE卒業式」のいい雰囲気のなかから、ふと窓の外を見ると…。

(……めっちゃ吹雪いてる…)

吹き荒れる風とそれによって舞い上がる細かな雪と降ってきている雪のせいで、外は本当に比喩ではなく真っ白でした。

卒業式に舞うのが桜ではなくまさかの粉雪。
ただの粉雪ならまだロマンチックですが、こうも荒々しく吹雪かれるともうなんと言ったらよいのやら。

そこから室内に目を転じてみれば、外とは全く異なったしっとりとした雰囲気が流れていて、ギャップに思わず笑いそうになりました。


式の最後に会場にいる全員で校歌を歌いました。
いつも明るい男の先輩が男泣きをしているのを見て、わたしもついほろりときました。


式が終わると花を持った在校生達が卒業生の教室の前に集まりました。

吹き抜けの上からその様子を見ていた私には、だんだん増える黒い制服を着て花を持っている彼らが、巣に食べ物を持ち運ぶ働き蟻に見えたことは内緒です。


泣いたり笑ったりと、教室から出てきた卒業生の表情は様々でしたが、皆いい顔をしているなあと感じました。

特別仲のいい先輩はいませんでしたが、それでも部活でお世話になったことを思い出して、一階で笑っている先輩に二階から「お世話になりました」と心の中で思った、アキコマ純情。



◀第6話第8話▶