アキコマ純情〜あきたこまち17歳文學〜




事が起こったのは、放課後、私が友達と他愛ないおしゃべりをしていた時だった。
「たのもー!!」
教卓の方から、聞きなれない男子の声が聞こえた。
振り返って見てみると、真っ黒に日焼けした他クラスの男子が教卓の前でしかめっ面をしていた。
そうして、クラス中の注目を集めると、彼は何故かにやっと笑った。
何をする気だろうかと見ていると…。
「うおぉぉおおおおお!!!」
急に雄叫びをあげながら、上半身の服を脱ぎ捨てていった。
クラス中の女子が見守るなか、彼はついに最後の一枚も脱いでしまった。
上半身裸になると、一礼して脱ぎ散らかった制服等を拾い上げ、背筋をピンと伸ばして颯爽と教室を去っていった。
そんな彼の様子を、始終無言で、無表情で見ていた私たちは、一拍遅れて笑いの渦に飲み込まれた。
「何あれ!?」
「なんで脱いだの?」
「ってかあれ誰?(笑)」
「あははっ…。笑いすぎてお腹いたい(笑)」
「腹筋返して(笑)」
…私たちは、突然割り込んできた非日常に笑い転げた。

何がそんなに面白かったのだろうか…。
たぶん、真っ黒に日焼けした強面の彼が、まさかあんなギャグ的なことをするとは思わなかったからだろう。

そして、男子の不思議な行動は次の日もあった。

それは、昼食の時間だった。
私たちはいつものように机をくっつけて、いつものメンバーで馬鹿みたいな話題で盛り上がっていた。
そんなガヤガヤした雰囲気の中、突然教室の扉が勢いよく開いた。

バーーン!!

教室のガヤガヤがピタッと止まった。
結構大きい音がしたため、私はビックリして丁度口の中にいれたブロッコリーを丸呑みしてしまった。
…当然むせた。
むせながら音がしたほうを見ると、昨日とは別のクラスの男子が扉の前で仁王立ちしていた。
彼の第一印象は、色白でひょろっと背が高かった…というか、なんか縦に長かった。
彼は無言で教卓の前に歩み出ると、両手で教卓をバシッと叩いた。
皆ビクッとした。
「誰だ!俺を『もやし』と言ったやつは!!」
…いや、知らんし。
とは思ったものの、『もやし』と呼ばれたらしい彼が、あまりにも『もやし』と呼ばれるのに納得の外見をしていたため、危うく飲みかけていた麦茶を噴くところだった。
危ない危ないと思った矢先、
「…ブッ…!」
…斜め前の友達が噴いた。

彼はクラス中を一通り見回すと、何故かフッと笑って綺麗なターンをし、教室から出ていった。
数秒後、
「で、…『もやし』は何しに来たの?」
誰が言ったのか、皆その一言で笑いを堪えきれなくなったらしく、爆笑が起こった。

噴いた友達はというと、「ちょ、まじで噴いた(笑)」と大きめの声でわざわざ暴露して、笑いながら周りからティッシュをもらって後始末をしていた。

後で聞いた話では、あれは一部のクラスの男子の間で流行っている、何かの罰ゲームだそうだ。
『もやし』の彼は、別に『もやし』と呼ばれたことはなかったらしい。
罰ゲームの際にたまたまつけられたものだそうだ。
それにしては妙にしっくりきたあだ名だと思った。

担任の先生にこれらのことを話したら、
「罰ゲームなんて懐かしい」
と言われた。
…そう言われてみると、罰ゲームなんて響きを聞いたの、小学校以来だな~と思ったアキコマ純情。



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